家族信託の専門家は誰?行政書士の役割と手続きの落とし穴 | これまで小山市で承った相続に関するご相談の中から主な例を選り抜いて解説しています

はじめに

家族信託は、高齢者や認知症の方の財産管理、相続対策などに有効な制度として注目されています。しかし、手続きや相談先については、まだ一般的な知識が浅く、混乱を招いている面もあります。そこで本記事では、家族信託について行政書士に関連する情報を中心に、その仕組みや特徴、メリット・デメリット、専門家の選び方などを丁寧に解説していきます。

家族信託とは

家族信託は、自分の財産を信頼できる家族や親族に一時的または永続的に管理・運用してもらうための仕組みです。認知症や判断能力の低下に備えて、早めに信頼関係のある人に財産管理を任せることができます。

仕組み

家族信託では、委託者が自身の財産を受託者に託し、受益者のために管理・運用してもらいます。受託者は委託者の意向を尊重しながら、財産の管理やメンテナンスを行います。一方の受益者は、その財産から生じる利益を受け取ることができます。契約内容によっては、受託者と受益者が兼務することも可能です。

主な手順としては、以下のようになります。

1. 委託者が受託者を選定し、信託契約を締結する
2. 信託財産(不動産、預金など)を受託者に移転する
3. 受託者が委託者の意向に沿って財産を管理・運用する
4. 受益者が信託財産から得られる収益などの利益を受ける

メリット

家族信託のメリットとしては、以下のようなものがあげられます。

• 認知症や判断能力低下への備え
• 柔軟な相続対策が可能
• 委託者の望む資産運用が可能
• 家族間のトラブル回避
• セカンドハウスや老後資金の確保

特に、遺言書では難しい財産の分割や運用方法の指定が可能なことが大きな利点です。介護費用の準備や障がい者の生活保障なども行えます。さらに、株式会社と異なり、相続税の大幅な節税効果は期待できません。

デメリット

一方で、デメリットとしては以下の点が挙げられます。

• 信託報酬が発生する可能性がある
• 受託者へ財産を移転する必要がある
• 契約内容によっては税金負担が重くなる恐れ

無報酬の家族信託でも、契約書作成や登記にかかる費用は発生します。また、受託者に財産を移転することで、トラブルのリスクも生じる可能性があります。税金面でのデメリットにも注意が必要です。

家族信託と行政書士

家族信託の手続きにおいて、行政書士にはどのような役割があるのでしょうか。行政書士の得意分野や関与の範囲、依頼するメリット・デメリットなどを見ていきましょう。

行政書士の役割

行政書士は、主に以下のような業務を行うことができます。

• 家族信託契約書の作成
• 遺言書や任意後見契約の作成
• 相続手続きに関する書類作成

特に、無報酬での契約書作成が行政書士の強みです。しかし、不動産の登記申請や家族間のトラブル解決など、一部の業務は扱えません。

行政書士に依頼するメリット

行政書士に家族信託の手続きを依頼するメリットは以下のようなものがあります。

• 費用が比較的安価
• 書類作成に長けている
• 報酬が発生しない無報酬での業務が可能

特に、費用面でのメリットが大きいと言えます。司法書士や弁護士に比べて、コストを抑えられる可能性があります。また、書類作成の手間も省けるでしょう。

行政書士に依頼するデメリット

一方で、行政書士に家族信託を依頼するデメリットもあります。

• 登記申請などの一部業務ができない
• トラブル発生時の対応が難しい
• 家族信託に関する専門性が不足している可能性

特に登記申請や紛争解決については、行政書士の業務範囲外となります。また、家族信託を専門的に扱う行政書士は少ないため、十分な対応が受けられない可能性もあります。

このように、行政書士には長所と短所があります。書類作成のみの依頼であれば有効ですが、家族信託のメインの相談先とするには限界があると言えるでしょう。

家族信託の専門家選び

家族信託の手続きでは、専門家の選定が非常に重要になってきます。それぞれの専門家の特徴を理解し、自身の状況に合わせて適切な専門家を選ぶ必要があります。

弁護士

弁護士は家族信託の登記申請はできませんが、高い法的専門知識を持っています。特に家族間のトラブルが予想される場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

一方で、信託法務の実務に不慣れな弁護士もいるため、家族信託の専門家を選ぶ必要があります。報酬も比較的高額になる傾向にあります。

司法書士

家族信託において、司法書士が最も適切な選択肢と言えます。司法書士は以下のような強みを持っています。

• 不動産登記申請が可能
• 相続手続きや成年後見に精通
• 一括して手続きを行えるワンストップサービス

高い専門性と手続きの一元化が最大のメリットです。一方で、報酬が比較的高額になる点にはご注意ください。

行政書士

先ほども説明した通り、行政書士は書類作成が得意分野です。簡易な家族信託の手続きであれば、行政書士に依頼するのも手です。しかし、専門性の高い案件については、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

税理士

最後に税理士についても触れておきましょう。家族信託には様々な税務上の影響があるため、税理士の関与が欠かせません。節税対策を含めて総合的なアドバイスを受けることが可能です。

ただし、税理士単独では家族信託の手続きそのものはできません。他の専門家と連携して対応する必要があります。

まとめ

家族信託は、認知症対策や相続対策に有効な制度です。しかし、専門家の選び方や手続きの流れなど、理解しておくべき点は多くあります。特に行政書士については、得意分野と限界を正しく認識することが大切です。

簡易な書類作成のみであれば行政書士に依頼するメリットもありますが、不動産登記や紛争対応など専門性が求められる場合は、司法書士や弁護士、税理士など、他の専門家と連携して対応することをおすすめします。

家族信託は、自身や大切な家族の将来に大きな影響を与えます。早めの対策と、適切な専門家の選定が何より重要なのです。

よくある質問

Q1.家族信託とはどのようなものですか?

A1.家族信託は、自分の財産を信頼できる家族や親族に一時的または永続的に管理・運用してもらうための仕組みです。認知症や判断能力の低下に備えて、早めに信頼関係のある人に財産管理を任せることができます。

Q2.家族信託にはどのようなメリットがありますか?

A2.家族信託のメリットとしては、認知症や判断能力低下への備え、柔軟な相続対策、委託者の望む資産運用、家族間のトラブル回避、セカンドハウスや老後資金の確保などが挙げられます。特に、遺言書では難しい財産の分割や運用方法の指定が可能なことが大きな利点です。

Q3.行政書士はどのように家族信託に関わることができますか?

A3.行政書士は、家族信託契約書の作成や遺言書、任意後見契約の作成、相続手続きに関する書類作成などの業務を行うことができます。特に、無報酬での契約書作成が行政書士の強みです。ただし、不動産の登記申請や家族間のトラブル解決については、行政書士の業務範囲外となります。

Q4.家族信託の手続きでは、どのような専門家に相談すべきですか?

A4.家族信託の手続きにおいては、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの専門家が関与することができます。それぞれ得意分野や特徴が異なるため、自身の状況に合わせて適切な専門家を選ぶ必要があります。特に、登記申請や家族間のトラブル解決が必要な場合は、司法書士や弁護士への相談がおすすめです。