相続で1000万円以上多く受け取れる?寄与分制度の完全ガイド【要件・算定方法・活用法】
はじめに
相続における「寄与分」とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人に対して、他の相続人よりも多く相続財産を分けてもらえる制度です。この制度は、相続人間の公平を図るための重要な仕組みであり、被相続人のために尽くした行為に対する正当な評価として設けられています。
寄与分の制度を理解することは、相続に関わるすべての人にとって重要です。なぜなら、適切に活用すれば1000万円以上も多く相続できる可能性がある一方で、制度の理解不足により本来受け取れるべき相続分を得られない場合もあるからです。本記事では、寄与分制度の基本から実践的な活用方法まで、包括的に解説していきます。
寄与分制度の基本概念
寄与分とは、相続人が被相続人のために特別な貢献をした場合に認められる相続分の加算部分のことです。この制度は、法定相続分だけでは相続人間の公平が保てない場合に、その不均衡を調整する役割を果たします。例えば、長年にわたって被相続人の介護を無償で行った相続人と、全く関わりを持たなかった相続人が同じ相続分を受け取るのでは公平性に欠けるという考えに基づいています。
寄与分が認められるためには、単なる親族としての義務を超えた「特別の寄与」が必要とされます。この「特別の寄与」とは、法律で義務付けられた範囲を超える高度な貢献を意味し、被相続人の財産の維持や増加に直接的な因果関係があることが求められます。寄与分の算定方法は一義的ではなく、相続人の貢献の程度や方法、人間関係などを総合的に考慮して判断されるため、個別の事情に応じた慎重な検討が必要です。
法的根拠と制度の変遷
寄与分制度は民法第904条の2に規定されており、相続人が被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に認められます。この制度は、相続における実質的公平を実現するために設けられた重要な法的枠組みです。
2019年の民法改正により、相続人以外の親族も「特別寄与料」として寄与分に類似した権利を主張できるようになりました。これは、例えば長男の妻が義理の親の介護を長年行っていた場合など、従来の制度では救済されなかった貢献者を保護するための改正です。ただし、特別寄与料の請求には相続開始から6か月または1年以内という期間制限があるため、早めの対応が必要です。
寄与分制度の社会的意義
寄与分制度は、現代の高齢化社会において特に重要な意義を持っています。高齢者の介護や財産管理は、多くの家庭で深刻な課題となっており、これらの負担を担う相続人の貢献を適切に評価することは、社会全体の公平性を保つ上で不可欠です。また、家族経営の事業において、無償で事業に従事した相続人の貢献を正当に評価することで、事業承継の円滑化にも寄与します。
しかし、寄与分制度は同時に相続争いの火種となりやすいという側面も持っています。感情的な対立を招きやすく、客観的な証拠の提示が困難な場合も多いため、制度の適切な運用には専門的な知識と慎重な対応が求められます。このような背景から、事前の準備と家族間での話し合いの重要性が高まっています。
寄与分の要件と認定基準
寄与分が認められるためには、法律で定められた厳格な要件を満たす必要があります。これらの要件は、寄与分制度の濫用を防ぎ、真に特別な貢献をした相続人を適切に評価するために設けられています。要件の理解は、寄与分を主張する際の基礎となる重要な知識です。
寄与分の認定は、個別の事情を総合的に考慮して判断されるため、同じような行為であっても結果が異なる場合があります。裁判所の実務では、客観的な証拠に基づく慎重な判断が行われており、主観的な感情や印象だけでは認められないのが現実です。
相続人であることの要件
寄与分を主張できるのは、原則として法定相続人に限られます。これは、寄与分が相続分の調整を目的とした制度であるため、相続権を有しない者には適用されないという考えに基づいています。配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹といった法定相続人のみが寄与分の主張権者となりますが、相続放棄をした者は相続人ではなくなるため、寄与分を主張することはできません。
ただし、2019年の民法改正により、相続人以外の親族についても「特別寄与料」という形で類似の保護が与えられることになりました。例えば、長男の配偶者や孫などが被相続人の介護に従事していた場合、一定の要件の下で特別寄与料を請求できます。この制度により、従来は報われなかった貢献者への配慮が図られるようになりました。
特別の寄与の要件
「特別の寄与」とは、通常の親族関係において期待される範囲を超えた貢献を意味します。同居する親子関係では、ある程度の介護や家事手伝いは当然の義務とみなされるため、これらの行為だけでは寄与分は認められにくいのが実情です。特別性の判断は、貢献の期間、程度、他の相続人との比較、被相続人との関係性などを総合的に考慮して行われます。
具体的には、10年以上にわたる毎日の介護、家業への長期間の無償従事、多額の金銭援助、専門的な財産管理などが特別の寄与として認められる可能性があります。重要なのは、その行為が被相続人の財産の維持や増加に実際に寄与したことを客観的に証明できるかどうかです。単なる精神的な支援や一般的な孝行行為では、特別の寄与とは認められません。
無償性の要件
寄与分が認められるためには、その貢献が無償または無償に近い状態で行われていることが必要です。適正な対価を受け取っていた場合は、既に経済的な見返りを得ているため、寄与分として追加的な評価を受けることはできません。ただし、実際に提供した労務やサービスの価値と比較して著しく低い対価しか受け取っていなかった場合は、その差額部分について寄与分が認められる可能性があります。
無償性の判断は、客観的な市場価格や一般的な報酬水準との比較によって行われます。例えば、介護サービスを提供していた場合は、同等のサービスを専門業者に依頼した場合の費用と実際に受け取った対価を比較し、その差額が寄与分の算定基礎となります。また、交通費や必要最低限の経費の受領は、無償性を否定するものではないとされています。
因果関係の要件
寄与行為と被相続人の財産の維持または増加との間に明確な因果関係があることが必要です。この因果関係は、寄与行為がなければ財産が減少していたであろうこと、または寄与行為により財産が実際に増加したことを意味します。例えば、被相続人の事業を手伝うことで事業収益が向上した場合や、適切な財産管理により損失を防いだ場合などが該当します。
因果関係の立証は、寄与分を主張する上で最も困難な要件の一つです。特に療養看護の場合、介護により被相続人の財産がどの程度維持されたかを数値化することは容易ではありません。しかし、介護により施設入所や有料サービスの利用を避けることができ、結果的に支出を削減できた場合は、その削減額が財産の維持に寄与したものと評価される可能性があります。
寄与分の類型と具体例
寄与分は、その内容や性質に応じて複数の類型に分類されます。各類型には特有の認定基準と算定方法があり、実際の事例における適用も異なります。これらの類型を理解することで、自身の状況がどの類型に該当するか、また寄与分が認められる可能性がどの程度あるかを判断することができます。
実務では、複数の類型が組み合わされるケースも多く、その場合は総合的な評価が行われます。また、同じ類型であっても、具体的な事情により認定される寄与分の額は大きく異なる場合があるため、個別の状況に応じた慎重な検討が必要です。
事業従事型(家業従事型)
事業従事型は、相続人が被相続人の事業に無償または無償に近い形で従事し、事業の維持や発展に貢献した場合に認められる寄与分です。この類型では、相続人の労務提供により事業収益が向上したり、経営が安定したりした場合に、その貢献度に応じて寄与分が算定されます。具体的には、家族経営の商店、農業、製造業などで長期間働いた場合が該当します。
事業従事型の寄与分算定では、通常得られるであろう給与額を基準として、実際に受け取った報酬との差額を計算します。ただし、生活費相当額の控除や裁量的割合の適用により、実際の寄与分は計算上の差額より低くなることが一般的です。また、事業の発展への貢献度や経営への参画度合いも考慮要素となるため、単純な労務提供以上の経営的判断や責任を担っていた場合は、より高い評価を受ける可能性があります。
療養看護型
療養看護型は、相続人が被相続人の介護や看護を無償で行った場合に認められる寄与分です。高齢化社会の進展により、この類型による寄与分の主張が増加しており、実務上も重要な位置を占めています。ただし、親族間では一定程度の介護は当然の義務とみなされるため、特別の寄与と認められるには、通常の扶養義務を超えた献身的な介護が必要とされます。
療養看護型の寄与分算定では、介護報酬基準や付き添い看護料を参考に、実際に提供したサービスの価値を評価します。要介護度、介護期間、介護の内容、相続人の負担度合いなどが考慮要素となり、専門的な医療行為を伴う重度の介護ほど高く評価される傾向があります。また、介護により施設入所費用を節約できた場合は、その節約額も寄与分の算定に含まれることがあります。
金銭等出資型
金銭等出資型は、相続人が被相続人に対して金銭や不動産などの財産を無償または低額で提供した場合に認められる寄与分です。この類型では、出資により被相続人の財産が維持されたり、債務が軽減されたりした場合に、その貢献度に応じて寄与分が算定されます。事業資金の提供、借金の肩代わり、不動産の提供などが典型例です。
金銭等出資型の寄与分算定は比較的明確で、提供した金銭や財産の価値がそのまま寄与分の基礎となることが多いです。ただし、出資の時期、被相続人の財政状況、出資の必要性などが考慮され、単なる贈与との区別が重要になります。また、出資により得られた利益や回避できた損失も評価対象となるため、出資の効果を客観的に示すことが重要です。
扶養型
扶養型は、相続人が被相続人の生活費を負担したり、住居を提供したりして扶養した場合に認められる寄与分です。この類型では、法定の扶養義務を超えた特別な扶養が行われた場合に、その負担額に応じて寄与分が算定されます。長期間にわたる生活費の全額負担、住宅の無償提供、医療費の負担などが該当します。
扶養型の寄与分算定では、実際に負担した扶養費用から通常の扶養義務の範囲内とみなされる部分を控除した額が基礎となります。被相続人の収入状況、他の相続人の扶養能力、扶養の必要性などが考慮要素となり、特に被相続人に十分な資力があったにもかかわらず相続人が扶養を行った場合は、より高い評価を受ける可能性があります。
財産管理型
財産管理型は、相続人が被相続人の財産を管理し、その維持や増加に貢献した場合に認められる寄与分です。不動産の管理、金融資産の運用、賃貸経営の代行などが典型例であり、適切な管理により財産価値の維持や収益の確保が図られた場合に評価されます。特に、専門的な知識や技能を要する財産管理を無償で行った場合は、高い評価を受ける可能性があります。
財産管理型の寄与分算定では、管理報酬相当額や管理により得られた利益、回避できた損失などが考慮されます。管理の期間、難易度、責任の重さ、成果などが評価要素となり、単純な事務作業レベルの管理では寄与分として認められない場合もあります。また、管理により実際に財産が増加したり損失が回避されたりしたことを客観的に証明することが重要です。
寄与分の算定方法と計算例
寄与分の算定は、法律で明確な基準が定められていないため、裁判所の裁量的判断に委ねられる部分が大きいのが実情です。しかし、実務では各類型に応じた一定の算定方法が確立されており、これらの方法を理解することで、おおよその寄与分額を予測することが可能です。
寄与分の算定では、客観的な基準による機械的な計算だけでなく、相続人間の公平性、被相続人との関係性、具体的な事情などが総合的に考慮されます。そのため、同じような貢献であっても、個別の事情により算定額が大きく異なる場合があることを理解しておく必要があります。
基本的な算定原則
寄与分の算定では、「寄与がなかった場合との差額」を基準とする考え方が採用されています。つまり、相続人の寄与行為により被相続人の財産がどの程度維持または増加したかを金銭的に評価し、その額を寄与分とするものです。この際、寄与行為の経済的価値を客観的に算定するため、市場価格や一般的な報酬水準が参考とされます。
また、寄与分は相続財産の範囲内で認められるものであり、相続財産を超える寄与分は認められません。さらに、他の相続人の遺留分を侵害する可能性がある場合は、その調整も考慮されます。これらの制約により、実際に認められる寄与分は、理論上の算定額より低くなることが一般的です。
事業従事型の算定方法
事業従事型の寄与分算定では、相続人が事業に従事した期間中に通常得られるであろう給与額を算定し、実際に受け取った報酬との差額を基礎とします。給与額の算定には、同種事業の従業員給与、公務員給与、最低賃金などが参考とされ、相続人の能力、責任の程度、事業への貢献度なども考慮されます。
具体的な計算例として、月額30万円相当の労務を10年間提供し、月額10万円の生活費のみを受け取っていた場合を考えてみましょう。この場合、差額は月額20万円で、10年間では2,400万円となります。しかし、実務では生活費控除(通常3割程度)や裁量割合(通常5割程度)が適用されるため、実際の寄与分は2,400万円×0.7×0.5=840万円程度となることが想定されます。
療養看護型の算定方法
療養看護型の寄与分算定では、介護報酬基準や付き添い看護料を参考として、提供した介護サービスの経済的価値を評価します。要介護度に応じた日額介護料、夜間介護の加算、医療的ケアの評価などが考慮され、介護期間を乗じて総額を算定します。ただし、親族としての当然の介護部分は控除されるため、全額が寄与分となるわけではありません。
例えば、要介護3の被相続人を5年間在宅介護した場合を考えてみましょう。日額1万円の介護サービス相当として、5年間(1,825日)では1,825万円となります。しかし、親族としての当然の介護分として3割を控除し、さらに裁量割合5割を適用すると、1,825万円×0.7×0.5=638万円程度が寄与分として算定される可能性があります。
金銭等出資型の算定方法
金銭等出資型の寄与分算定は比較的明確で、出資した金銭や財産の価値がそのまま寄与分の基礎となることが多いです。ただし、出資時期の物価水準、利息相当額、出資により得られた利益などが考慮される場合があります。また、出資の必要性や緊急性、他の手段の有無なども評価要素となります。
例えば、被相続人の事業資金として1,000万円を無利子で貸し付け、返済を受けなかった場合、この1,000万円は寄与分の基礎となります。さらに、この資金により事業が維持され、廃業による損失を回避できた場合は、その回避できた損失額も寄与分に加算される可能性があります。ただし、出資により相続人自身も利益を得ていた場合は、その分が控除されることもあります。
相続分への反映方法
寄与分が認められた場合の相続分計算は、まず相続財産から寄与分を除外し、残額に法定相続分を適用して各相続人の相続分を算定し、最後に寄与者の相続分に寄与分を加算するという手順で行われます。この計算方法により、寄与者は法定相続分に加えて寄与分を取得することができます。
具体例として、相続財産3,000万円、相続人が配偶者と子2人、長男の寄与分が600万円の場合を考えてみましょう。まず、3,000万円-600万円=2,400万円に法定相続分を適用します。配偶者:2,400万円×1/2=1,200万円、長男:2,400万円×1/4+600万円=1,200万円、次男:2,400万円×1/4=600万円となり、長男は寄与分により次男より600万円多く相続することになります。
特別寄与料制度
2019年7月の民法改正により新設された特別寄与料制度は、相続人以外の親族が被相続人に特別の寄与をした場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる制度です。この制度により、従来は法的保護を受けられなかった相続人以外の貢献者、例えば長男の妻や孫などの権利が保護されることになりました。
特別寄与料制度は、現代の家族形態の多様化や高齢者介護の実態を踏まえた重要な改正であり、相続法の実質的公平性を高める効果が期待されています。しかし、新しい制度であるため、実務の運用方法や具体的な算定基準などには不明確な部分も残されており、今後の裁判例の蓄積が待たれています。
特別寄与料の要件
特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)に限られます。ただし、相続人及び相続放棄をした者は除外されます。また、被相続人に対する特別の寄与があったことが必要で、この「特別の寄与」は相続人の寄与分と同様の基準で判断されます。つまり、通常期待される範囲を超えた貢献が必要ということです。
特別寄与料の典型例としては、長男の妻による義理の親の長期介護、孫による祖父母の事業手伝いや財産管理、兄弟の配偶者による療養看護などが挙げられます。これらの貢献が無償または無償に近い形で行われ、被相続人の財産の維持や増加に寄与したことが認められれば、特別寄与料の請求が可能となります。
特別寄与料の算定と上限
特別寄与料の算定方法は、基本的に相続人の寄与分と同様の考え方が適用されます。すなわち、特別寄与者の貢献により被相続人の財産がどの程度維持または増加したかを金銭的に評価し、その額を特別寄与料とします。介護の場合は介護報酬基準、事業従事の場合は労務対価、財産管理の場合は管理報酬などが参考とされます。
ただし、特別寄与料には法定の上限が設けられており、被相続人が相続開始時において有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。この上限設定により、相続人の利益が過度に害されることを防いでいます。また、特別寄与料は相続人全員に対して請求することになるため、各相続人の負担割合も問題となります。
請求手続きと期間制限
特別寄与料の請求は、まず相続人との協議により行われます。協議が調わない場合や協議をすることができない場合は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。この点は相続人の寄与分と同様の手続きですが、特別寄与料には厳格な期間制限が設けられている点が大きく異なります。
特別寄与料の請求は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内に行わなければなりません。この期間を過ぎると、特別寄与料の請求権は消滅してしまうため、該当する可能性がある場合は早急に専門家に相談することが重要です。この期間制限は、相続人の寄与分にはない特別寄与料制度固有の制約です。
実務上の課題と対応策
特別寄与料制度は新設されたばかりであるため、実務上の運用には多くの課題が残されています。特別寄与者と相続人との間の協議がまとまりにくい場合が多く、家庭裁判所での手続きに発展するケースが増加しています。また、特別寄与料の算定基準や相続人間での負担割合についても、統一的な基準が確立されていないのが現状です。
これらの課題に対応するため、特別寄与者は貢献の内容を客観的に証明できる資料を事前に準備しておくことが重要です。介護日誌、支出記録、医師の診断書、事業従事の証明書類などを整備し、特別の寄与があったことを明確に示すことで、円滑な請求手続きが可能となります。また、期間制限があるため、相続開始後は速やかに専門家に相談することが推奨されます。
実務における寄与分の活用と注意点
寄与分制度を実際に活用する際には、法的要件の充足だけでなく、実務上の様々な課題への対応が必要となります。寄与分の主張は相続人間の感情的対立を招きやすく、家族関係の悪化につながる可能性もあるため、慎重なアプローチが求められます。また、適切な証拠収集や手続きの選択も重要な要素です。
成功的な寄与分の主張のためには、事前の準備が不可欠です。日頃から貢献の記録を残し、客観的な証拠を蓄積することで、いざという時に適切な主張ができるようになります。また、専門家の助言を得ながら、戦略的なアプローチを検討することも重要です。
証拠収集と立証のポイント
寄与分の主張において最も重要なのは、客観的な証拠による立証です。感情論や主観的な印象だけでは寄与分は認められないため、貢献の事実と程度を具体的に示す資料の準備が不可欠です。介護の場合は介護日誌、医師の診断書、薬剤費の領収書などが有効であり、事業従事の場合は勤務記録、事業収支の変化、第三者の証言などが重要な証拠となります。
証拠収集の際は、貢献の開始時期、継続期間、具体的内容、頻度、他の相続人との比較などを明確にすることが重要です。また、被相続人の状況変化や財産への影響も記録しておく必要があります。写真、動画、メール、日記なども有効な証拠となる場合があるため、日常的に記録を残す習慣を持つことが推奨されます。
遺産分割協議での対応
寄与分の主張は、まず相続人間の遺産分割協議において行われます。協議では、寄与分の存否、内容、金額について相続人全員の合意を得る必要があるため、他の相続人への説明と説得が重要となります。感情的な対立を避けるため、客観的な資料に基づく冷静な議論を心がけ、必要に応じて専門家の同席も検討すべきです。
協議が不調に終わった場合は、家庭裁判所での調停手続きに移行することになります。調停では、調停委員が中立的な立場から話し合いを仲介するため、より建設的な議論が期待できます。ただし、調停でも合意に至らない場合は、最終的に審判手続きにおいて裁判所が寄与分を決定することになります。
時効と期間制限への対応
相続人の寄与分については法定の時効はありませんが、遺産分割協議が成立する前に主張する必要があります。一度遺産分割が確定してしまうと、後から寄与分を理由として分割内容の変更を求めることは困難になるため、適切なタイミングでの主張が重要です。また、相続開始から長期間が経過すると、証拠の散逸や関係者の記憶の曖昧化により立証が困難になる可能性があります。
一方、特別寄与料については前述のとおり厳格な期間制限があるため、該当する可能性がある場合は速やかに行動する必要があります。相続開始の事実を知った時から6か月以内、または相続開始から1年以内という短期間での対応が求められるため、早期の専門家への相談が不可欠です。
他の相続制度との関係
寄与分は他の相続制度との関係も考慮する必要があります。特に遺留分との関係では、寄与分が認められることにより他の相続人の遺留分を侵害する可能性があり、その場合は遺留分減殺請求の対象となることがあります。また、生前贈与や遺贈がある場合は、特別受益との調整も必要となり、複雑な計算が必要となります。
これらの制度間の調整は専門的な知識を要するため、寄与分を主張する際は必ず専門家に相談することが推奨されます。適切な制度選択や手続きの組み合わせにより、より有利な結果を得られる可能性があります。また、税務上の取扱いについても考慮が必要で、寄与分の認定により相続税の計算に影響する場合があります。
まとめ
相続における寄与分制度は、被相続人に特別な貢献をした相続人の権利を保護し、相続人間の公平性を実現するための重要な制度です。事業従事、療養看護、金銭出資、扶養、財産管理といった各類型において、適切な要件を満たす場合には相当額の寄与分が認められる可能性があります。また、2019年の民法改正により創設された特別寄与料制度により、相続人以外の親族の貢献も法的に保護されるようになりました。
しかし、寄与分の認定には厳格な要件充足と客観的な証拠による立証が必要であり、実務上は多くの課題も存在します。成功的な寄与分の主張のためには、日頃からの記録保持、適切な証拠収集、専門家との連携が不可欠です。また、家族関係への配慮や他の相続制度との調整も重要な要素となります。寄与分制度を適切に活用することで、真に公平な相続の実現が可能となりますが、その際は専門的知識と慎重な対応が求められることを理解しておくべきでしょう。
よくある質問
Q1.寄与分とは何ですか?
A1.寄与分とは、相続人が被相続人のために特別な貢献をした場合に認められる相続分の加算部分のことです。この制度は、相続人間の実質的な公平を図るために設けられた重要な仕組みです。
Q2.寄与分を受け取るためにはどのような要件が必要ですか?
A1.寄与分を受け取るためには、相続人であること、被相続人のために「特別の寄与」があったこと、その寄与が無償または無償に近いこと、寄与行為と被相続人の財産の維持または増加との間に因果関係があることが必要とされます。
Q3.特別寄与料制度とはどのようなものですか?
A1.2019年の民法改正により新設された特別寄与料制度は、相続人以外の親族が被相続人に特別の寄与をした場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる制度です。これにより、従来は保護されていなかった貢献者の権利が認められるようになりました。
Q4.寄与分の算定方法はどのように行われますか?
A4.寄与分の算定では、「寄与がなかった場合との差額」を基準とし、市場価格や一般的な報酬水準などを参考に、客観的に評価された金額が寄与分の基礎となります。類型ごとに具体的な算定方法が確立されており、事業従事型や療養看護型などで一定の基準が適用されます。
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